売上は前年より伸びているのに、月末になっても手元の現金が増えていないという悩みはよく聞きます。
原因の多くは、経費の内訳を項目ごとに把握できていないことにあります。
特に、売上に応じて増減する費用と、売上にかかわらず発生する費用を区別できていないケースは少なくありません。
この記事では、飲食店にかかる経費を変動費と固定費に分け、売上に対する割合の目安を解説します。
飲食店の経費は変動費と固定費に分けて把握する
経費を適切に管理するには、売上に応じて増減する変動費と、一定額が発生する固定費に分けて考えることが大切です。
ここでは、飲食店の主な経費を変動費と固定費に分けて解説します。
売上に連動して動く変動費
変動費の中心は食材原価です。
消耗品費も変動費のひとつで、おしぼりやテイクアウト用の容器、割り箸、紙ナプキン、洗剤など、客数に応じて使用量が増えます。
変動費で見落とされやすいのが、キャッシュレス決済や予約サイトの手数料です。
クレジットカードやQRコード決済、予約サイト経由の売上が増えるほど手数料も増えるため、売上が伸びても利益が増えにくくなります。
また、成果に応じて費用が発生する販促費も変動費に含まれます。
売上が落ちても減らない固定費
固定費の代表は家賃で、共益費や管理費を含めた実際の支払額で確認します。
そのほか、水道光熱費の基本料金や厨房機器・POSレジのリース料、火災保険・賠償責任保険の保険料、通信費なども固定費です。
固定費は売上が減っても一定額の支払いが発生するため、売上がゼロの月でも家賃やリース料などの負担は残ります。
そのため、開業時に立地や物件の広さを決める際は、その後も継続して発生する固定費も考慮する必要があります。
人件費は変動費と固定費の両方に該当する
人件費は、変動費と固定費のどちらにも該当します。
正社員の給与と社会保険料の会社負担分は、売上が落ちても支払いが発生するため、固定費に近い扱いとなります。
一方、アルバイトやパートの人件費はシフト調整によって増減するため、変動費に近い費用です。
正社員とアルバイト・パートの割合によって、売上が落ちたときの人件費の調整のしやすさが変わります。
正社員比率が高い店は、教育やサービス品質を安定させやすい反面、売上が落ちた月に人件費を調整しにくいです。
一方、アルバイト中心の店は人件費を調整しやすいものの、人材が定着しにくく、採用や教育のコストが繰り返し発生しやすくなります。
どちらが正しいという話ではなく、自分の店がどちらに寄っているかを知っておくことが大切です。
見落としやすい経費
経費として計上されていても、見落としやすい項目のひとつが廃棄ロスです。仕入れた食材を提供できずに廃棄すると、売上につながらないまま原価だけが発生します。
原価率が目安より高い場合は、レシピ上の原価だけでなく、廃棄ロスが増えていないかも確認しましょう。
まかないに使う食材費も、見落としやすい経費のひとつです。
スタッフに無償で提供する場合でも食材費は発生するため、原価として把握しておく必要があります。
リースの残債や退去時の原状回復費用、厨房機器の入れ替え費用などは、毎月発生する経費とは別に、将来の支出として見込んでおきましょう。
月次で利益が出ていても、こうした支出を想定していないと資金繰りが厳しくなる場合があります。
飲食店の経費の目安は?FL比率とFLR比率
飲食店の経費を見直す際は、売上に対して各経費がどのくらいの割合を占めているかを確認することが大切です。
ここでは、FL比率とFLR比率の目安や、自店の数字との比較方法を解説します。
FL比率とは
FL比率は、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計が売上に占める割合を示す指標です。
計算式は「(食材費+人件費)÷売上高×100」です。
飲食店の経費の中でも大きな割合を占めやすい二つをまとめて見るための指標で、合計60%以内が目安としてよくあげられます。
FLR比率とは
FL比率に家賃(Rent)を加えたものがFLR比率です。
計算式は「(食材費+人件費+家賃)÷売上高×100」です。
一般的には、食材費30%以内、人件費30%以内、家賃10%以内、合計70%以内という目安があります。
残る30%から水道光熱費、消耗品費、販促費、通信費などを支払い、利益を確保します。
FL比率60%、FLR比率70%という数字は、業界で経験的な目安として用いられている水準で、法令や公的統計にもとづく基準ではありません。
適正な経費割合は、業態によって異なります。
たとえば、高級食材を扱う店では食材費率が高くなりやすく、仕込みに手間がかかる業態では人件費率が上がりやすいです。
目安の数値だけで判断せず、自店の業態や経費の内訳を踏まえて確認することが大切です。
その他の経費は自店の推移を確認する
水道光熱費や販促費、消耗品費、通信費などは、業態や店舗規模によって金額に差が出やすいため、一律の目安を示すのは難しい項目です。
他店と比べるよりも、自店の前年同月や過去の推移を確認し、金額が増えている場合は料金単価や営業時間、設備の状態などに変化がないか確認しましょう。
目安と自店の差をどう読むか
FLR比率が目安を超えている場合は、食材費・人件費・家賃のうち、どの項目が高いのかを確認します。
食材費率が高い場合は、メニューごとの原価に加え、発注量や廃棄ロスも見直しましょう。
レシピ上の原価が適正でも、廃棄が多ければ実際の原価率は上がります。
人件費率が高い場合は、すぐにシフトを削るのではなく、時間帯ごとの業務量や人員配置を確認することが大切です。
ピーク時に人手が不足しているのか、アイドルタイムに人員が余っているのかによって、必要な対策は異なります。
家賃比率が高い場合は、家賃そのものを短期間で下げるのは難しいため、回転数の向上やランチ営業、テイクアウトなどで売上を増やす方法を検討しましょう。
飲食店の経費の計算と管理方法
目安を知っていても、毎月の数字を把握できなければ経費の見直しにはつながりません。
ここでは、飲食店の経費を管理する方法を解説します。
毎月同じ区分で集計する
売上、仕入、人件費、家賃などの固定費、その他の経費を、毎月同じ区分で集計します。
区分が月ごとに変わると、前月との比較ができなくなります。
特に大切なのが棚卸です。
原価は「仕入れた金額」ではなく「使った金額」で計算します。
月末の在庫を数え、「期首在庫+当月仕入−期末在庫」で当月の原価を出します。
仕入額をそのまま原価として扱うと、まとめ買いをした月は原価率が上がり、翌月は下がるなど、月ごとの比較が難しくなります。
メニュー別に原価を出す
全体の原価率だけを見ていると、原価の高いメニューが売れて利益を圧迫していても、その原因に気づきにくくなります。
どのメニューに問題があるのかを把握するためにも、主力商品から一品ごとの原価を計算して確認することが大切です。
すべてのメニューを一度に見直す必要はなく、売上の割合が高い商品から優先して確認すると、改善につなげやすくなります。
削る経費の順番を間違えない
経費を見直す際は、売上や顧客満足への影響が小さい項目から着手するのが基本です。
まず確認したいのは、使っていないサブスクリプションや十分に活用できていないサービス、保障内容が過剰な保険、稼働していない機器のリースなどの固定費です。
こうした費用は、営業やサービスの質への影響を抑えながら削減できます。
固定費を見直した後は、廃棄ロスや発注量を確認しましょう。
必要以上の仕入れや廃棄を減らせば、売上やサービスの質への影響を抑えながら原価率の改善につながります。
人件費や食材の質は、ほかの経費を見直したうえで検討しましょう。
帳簿と証拠書類を適切に管理する
経費を正しく管理するには、領収書やレシート、請求書などの証拠書類を保存し、取引内容を帳簿に記録しておくことが大切です。
支払先や金額だけでなく、何のために支出したのかを確認できるようにしておくと、経費の内訳を把握しやすくなり、後から取引内容を確認する際にも役立ちます。
また、電子的に受け取った請求書や領収書については保存方法に要件が定められているため、国税庁が公表している最新の情報を確認しましょう。
飲食店の経費に関するよくある質問
ここでは、飲食店の経費についてよくある疑問を解説します。
飲食店の経費割合の平均はどれくらいですか?
食材費30%以内、人件費30%以内、家賃10%以内、合計70%以内が目安とされています。
ただしこれは業界で経験的に用いられる目安であり、公的な統計にもとづく平均値ではありません。
高級店、居酒屋、カフェ、ラーメン店では適正な比率がそれぞれ異なります。
他店の数字に合わせるのではなく、自店の過去の推移と比較しましょう。
個人事業主の飲食店で経費にできるものは何ですか?
原則は、事業のために支出したものです。
食材の仕入れ、家賃、水道光熱費、スタッフの給与、消耗品、広告費、通信費などが当てはまります。
自宅兼店舗の場合は、事業に使っている割合で按分します。
経費を増やせば税金は減りますか?
経費が増えると課税所得が減るため、結果として税額も下がります。
ただし、節税できる金額よりも支出額のほうが大きいため、税金を減らす目的だけで不要な経費を増やすのは得策ではありません。
経費を使う際は、節税効果だけでなく、その支出が売上や店舗運営の改善につながるかどうかを基準に判断しましょう。
飲食店の経費は内訳と割合を把握しよう
飲食店の経費を適切に管理するには、食材費や人件費、家賃などの内訳を把握し、売上に対する割合を継続して確認することが大切です。
FL比率やFLR比率を目安に自店の数字を分析すれば、見直すべき経費や改善すべきポイントを把握しやすくなります。
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