コラム

飲食店の無断キャンセルは請求できる?キャンセル料の目安・当日の対応・予防策を紹介

目次

予約の時間になっても客が現れず、電話もつながらない場合、仕込んだ食材や確保していた席や人員にかかったコストなどがムダになります。
無断キャンセルが続いてしまうと、売上を圧迫しかねません。
この記事では、無断キャンセルに対して店が請求できる範囲やキャンセル料の考え方、発生当日から後日の対応について解説します。

飲食店の無断キャンセルとは

無断キャンセルとはどのような状態を指すのでしょうか。
ここでは、ドタキャンとの違いや、飲食業界で発生している損失について解説します。

無断キャンセルとドタキャンの違い

無断キャンセルは、予約をしていたにもかかわらず、事前の連絡なく来店しないことです。
一方、ドタキャンは、直前であっても店への連絡があるケースを指します。
どちらも店に損失が生じる可能性はありますが、連絡の有無によって対応できる範囲が変わります。
事前に連絡があれば、食材を別の用途に回したり、空いた席に別の客を通したりすることも可能です。
無断キャンセルではこうした対応が難しく、損失が大きくなりやすいのが懸念点です。

業界全体でどれくらいの損失が出ているのか

無断キャンセルが飲食業界全体に与えている損害は、年間で約2,000億円ともいわれています。
無断キャンセルは飲食店の予約全体の1%弱を占めるとされ、前日・2日前のキャンセルを含めると発生率は6%強、被害額は約1.6兆円に及ぶと推計されています。

なぜ無断キャンセルが起きるのか

飲食店で無断キャンセルが起きた事例には、大学のサークルの飲み会としてコース予約が入ったのに当日一人も来店しなかった例、取引先の接待のために和食・洋食・中華の3店を同じ日時で押さえ、実際に行った1店以外に連絡をしなかったなどがあります。
複数店の仮押さえや、幹事が人数を確定できないこと、予約そのものの失念などが理由の場合もあります。
オンライン予約が手軽になったことで、複数の店舗を仮押さえしやすくなっていることも、無断キャンセルが起きるひとつの要因です。

飲食店は無断キャンセル時に請求できるのか

無断キャンセルが発生した場合、店側は損害に応じてキャンセル料を請求できる可能性があります。
ここでは、請求できる条件やキャンセル料の算定方法について解説します。

予約は契約として扱われる

飲食店の予約は、予約方法にかかわらず内容が確定していれば飲食の提供契約が成立するとされています。
契約が成立しているにもかかわらず来店がなければ、民法415条の債務不履行にもとづく損害賠償を請求できる可能性があります。
契約の成立が認められない場合でも、事情によっては民法709条の不法行為にもとづく損害賠償が発生する場合があります。
ただし、実際に請求が認められるかどうかは個別の事情によります。

コース予約と席のみ予約で考え方が変わる

コース予約では、別の客で損失を補うことが難しいため、コース料金の全額をキャンセル料として請求できる場合があります。
ただし、転用できる飲食物の代金や人件費などは除いて考えます。
席のみの予約では、実際の損害額を個別に算定するのが難しいのが現状です。
そのため、平均客単価の何割かを目安に算定します。
飲食店の売上高に占める割合は、原価3割、人件費4割弱、固定費3割と想定されることがあります。
無断キャンセルでは直前の対応が難しいため、補填できない損失は平均客単価の5〜7割程度になるという考え方です。

請求できる損害の内容

席のみ予約で生じる損害としては、転用できない原材料費や食材の廃棄費用、仕込み・待機にかかった人件費、サービス料、逸失利益などが挙げられます。
一方、賃料などキャンセルの有無にかかわらず発生する固定費や、転用できる原材料費・人件費は対象外です。
なお、逸失利益が消費者契約法上の「平均的な損害」に含まれるかどうかは、意見が分かれています。
そのため、逸失利益の全額が認められるとは限りません。

キャンセルポリシーは事前に伝える

キャンセル料を請求するためには、適切な金額の算定とキャンセルポリシーの設定が欠かせません。
さらに、予約時にその内容を客へ伝えることも必要です。
事前に案内していない状態で、後から金額だけを請求するのは難しくなります。
キャンセル料は、自由に金額を設定できるわけではありません。
消費者契約法9条1号では、平均的な損害の額を超える部分は無効とされています。
根拠のない高額なキャンセル料は法律上問題になる可能性があります。
金額を設定する際は、自店の原価や実際に生じる損害をもとに根拠を整理し、必要に応じて弁護士に相談しましょう。

飲食店で無断キャンセルが起きたときの対応

無断キャンセルが発生した際は、当日の連絡や記録だけでなく、その後の請求や対応も考えておく必要があります。
ここでは、無断キャンセルが起きた当日と後日に取るべき対応について解説します。

無断キャンセルが起きた当日の対応

予約時間を過ぎても来店がない場合は、電話やメッセージで連絡を取ります。
このとき、何時に何回、どの手段で連絡したかを記録に残してください。
席をいつ開放するかの基準も、あらかじめ決めておくとよいです。
判断を現場に任せると、この時間が延びます。
「連絡が取れないまま何分過ぎたら席を開放する」という基準を店として決めておきましょう。
連絡が取れないと判断した時点で、廃棄した食材、待機させた人員、断った他の予約を書き留めます。
後日の記憶ではなく、その日のうちに残すことが大切です。

後日に連絡が取れた場合の対応

予約を忘れていたなど故意ではない可能性も考え、事情を確認しましょう。
頭ごなしに責めると話がこじれ、回収にもつながりにくくなります。
請求する場合は、予約時にキャンセルポリシーを案内していたこと、実際に発生した損害の内訳、算定の方法など、金額の根拠を添えて伝えます。
感情的なやり取りを避けるため、対応する担当者は責任者に固定しておいてください。

連絡が取れない場合の対応

予約時に聞いた氏名と電話番号だけでは、相手を特定しきれないことがあります。
内容証明郵便の送付、支払督促、少額訴訟などの手続きが紹介されていますが、いずれも費用と手間がかかります。
回収できる見込み額とそれらを比べて、進めるかどうかを判断してください。

警察に相談できるのか

無断キャンセルは、原則として民事の問題です。
警察が代金を回収してくれるわけではありません。
ただし、初めから支払う意思がないのに予約を入れて食材を用意させたような場合や、虚偽の予約を繰り返して店の営業を妨げるような場合には、刑事の問題として扱われる場合があります。
同じ相手から繰り返し被害を受けている場合は、記録をそろえたうえで警察と弁護士の双方に相談してください。

飲食店が無断キャンセルを減らすための予約方法

無断キャンセルによる損失を抑えるには、発生後の対応だけでなく、予約時の対策も必要です。
ここでは、無断キャンセルを防ぐために店舗でできる対策について解説します。

予約を受けるときに確認すること

代表者の氏名と連絡先、人数、コースの有無、キャンセル期限とキャンセル料の条件を、電話でもネット予約でも同じようにそろえてください。
予約時に連絡先を確認しておけば、変更やキャンセルが発生した際にも連絡を取りやすくなります。
日時だけを押さえる曖昧な仮予約を受けないよう、予約時のルールもあわせて決めておきましょう。

リマインドの入れ方を工夫する

予約の再確認(リコンファーム)の徹底も、無断キャンセルの防止策のひとつとして有効です。
全件に電話をかけるのは負担が重いため、メッセージやメールで送るのがよいです。
3日前、前日、当日朝など、送信のタイミングを決めてください。
人数の再確認を兼ねると、当日の変更を事前に把握しやすくなります。

連絡しやすい仕組みを用意する

キャンセルしようとしたが電話がつながらず、結果として無断キャンセルになっている場合もあります。
開店前や営業時間外は、電話が繋がらない店も多いです。
メッセージや問い合わせフォームなど、営業時間外でもキャンセルを受け付けられる方法を用意しておきましょう。
連絡手段を増やしておけば、無断キャンセルの防止にもつながります。

事前決済・デポジットを導入する

事前決済や預かり金を取り入れるのも、無断キャンセルを防ぐ方法のひとつです。
特に、大人数やコース予約など、キャンセル時の損失が大きくなりやすい予約で活用できます。
客側の負担も考慮し、対象となる予約や金額をあらかじめ決めたうえで取り入れましょう。

団体予約の受け方を変える

団体予約では、人数確定の期限を設けたり、フォームや書面で予約を受けたりする方法があります。
繁忙期には予約条件を見直すなど、通常の予約と受付方法を分けるのもひとつの対策です。
団体予約は無断キャンセル時の損失が大きくなりやすいため、あらかじめルールを決めておくことでリスクを抑えやすくなります。

飲食店の無断キャンセルをしてしまった側はどうすればよいか

予約をしていても、うっかり忘れてしまうことはあります。
無断キャンセルに気づいた後に取るべき対応を解説します。

気づいた時点で連絡する

無断キャンセルに気づいたら、できるだけ早く店へ連絡しましょう。
翌日になってしまった場合でも、そのままにせず、予約を忘れていたことへの謝罪や事情を伝えることが大切です。
あわせて、キャンセル料が発生するかどうかも確認してください。

キャンセル料を請求されたら

キャンセル料を請求されたら、予約時にキャンセルポリシーの案内があったか、請求額の根拠が説明されているかを確認しましょう。
消費者契約法では、平均的な損害の額を超える部分は無効とされています。
請求額に納得できない場合は、消費生活センターや弁護士に相談する方法もあります。

店側の都合でキャンセルされた場合

店の都合で予約を取り消された場合は、予約が契約として成立していたか、代替案が示されたかなどによって対応が変わります。
判断に迷う場合は、消費生活センターや弁護士に相談しましょう。

飲食店の無断キャンセルに関するよくある質問

飲食店の無断キャンセルについて、よくある疑問を解説します。

席のみの予約でもキャンセル料を請求できますか?

席のみの予約でも、キャンセル料を請求できる可能性があります。
損害額の算定方法として、平均客単価の何割かを目安にする考え方があります。
ただし、キャンセル料を請求する場合は、予約時にキャンセルポリシーを伝え、金額の算定根拠を説明できるようにしておくことが大切です。

電話番号だけで相手に請求できますか?

氏名と電話番号のみでは、相手の住所などを特定しきれず、書面の送付や法的手続きに進めない場合があります。
予約時に連絡先を確認しておけば、無断キャンセル後の連絡や請求を進めやすくなります。
相手の特定が難しい場合は、弁護士に相談して対応方法を確認しましょう。

キャンセルポリシーはどこに書いておけばいいですか?

予約フォームや予約確認メール、メッセージ、電話予約時の口頭案内など、予約時に客が確認できる方法で伝えます。
ネット上に掲載しているだけでは電話予約の客に伝わらないため、予約時に必要なキャンセルポリシーを案内することが大切です。

飲食店は無断キャンセルへの事前準備を徹底しよう

無断キャンセルによる損失を抑えるには、発生後の対応だけでなく、予約時の準備も欠かせません。
キャンセルポリシーの明示や連絡先の確認、リマインドの送信など、店舗全体で対応方法を決めておくことが大切です。
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山内芳輝

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