コラム

飲食業界の今後はどうなる?市場規模の推移・5つの課題・これから伸びる業態をデータで解説

目次

「飲食業界は厳しい」と言われる一方で、外食の売上は前年を上回る状況が続いています。
一見すると矛盾しているように見えますが、業界全体の売上と個々の店舗の経営状況は、必ずしも同じ動きをするわけではありません。
この記事では、飲食業界の市場規模の推移や現在の課題、今後伸びると考えられる業態、働く側から見た将来性について、複数のデータをもとに解説します。

飲食業界の市場規模はどう推移してきたか

飲食業界は時代によって市場が大きく変動してきました。
市場全体の規模とこれまでの推移を解説します。

外食産業の市場規模の推移

外食産業の市場規模は、公益財団法人食の安全・安心財団と日本フードサービス協会が毎年推計を公表しています。
2024年9月に公表された推計によると、2023年(1月〜12月)の外食産業市場規模は24兆1,512億円で、前年比20.2%の増加でした。
ただしこれは、感染症拡大前の2019年と比べると8.1%低い水準です。
テイクアウトや惣菜など中食を含めた広義の外食市場で見ると、金額はさらに増加しています。
2024年度の国内外食市場は、中食業態を含めて32兆1,423億円、前年度比2.9%増になると予測されています。

直近の売上は伸びているが客数は伸びていない

日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」は、会員企業の全店データを月次で公表しています。
2026年1月度の調査では、外食全体の売上が前年同月比108.5%となり、2021年12月以降50か月連続で前年を上回りました。
しかし、2026年6月度の調査では、外食全体の売上は前年同月比103.3%だった一方、客数は伸び悩み、客単価の上昇と店舗数の増加が売上を押し上げたと説明されています。
値上げによって客単価が上昇しているため、今後も同じペースで売上が伸び続けるとは限りません。
業界全体では売上が伸びていても、個々の店舗では厳しい経営状況が続いています。

業態別・企業別に見る

大手外食企業では、売上規模を拡大する動きが見られます。
ゼンショーホールディングスは2024年度に、国内の外食企業として初めて連結売上高1兆円を超えました。
すかいらーくホールディングスや、スシローを展開するFOOD & LIFE COMPANIES、日本マクドナルドホールディングスなども、売上高で上位に入っています。
コロナ禍で外食需要が大きく落ち込んだ後、売上は徐々に回復してきました。
ただし、回復のペースは業態によって異なります。
ファストフードは比較的早く売上を戻し、ファミリーレストランやカフェも持ち直してきました。
一方、宴会需要の影響を受けやすいパブ・居酒屋業態では、ほかの業態に比べて回復が遅れています。
さらに、同じ飲食業界でも企業や店舗の規模によって状況は異なります。
大手チェーンが売上や店舗数を伸ばす一方、小規模店では原材料費や人件費の上昇を価格に転嫁しきれず、利益を確保しにくくなっています。
市場全体の拡大が、すべての店舗の利益増加につながっているわけではありません。

飲食業界が直面している5つの課題

市場が回復するなかでも、個々の店舗が厳しい状況にある背景には、いくつかの課題があります。
ここからは、飲食業界が直面している5つの課題について解説します。

人手不足

帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」では、正社員が不足していると答えた企業が全体の52.3%、非正社員が不足していると答えた企業が28.8%でした。
飲食店の非正社員不足は58.6%で、業種別では高い水準にあるものの、3年連続で改善しています。
改善しているとはいえ、なお6割近い企業が足りないと答えている状況です。
人手不足は採用の問題だけではありません。
同社の「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」では、人手不足倒産が441件と過去最多を更新し、そのうち飲食店は21件で業種別の過去最多となりました。
人材を確保できないことで、営業時間の短縮や出店計画の見直しを迫られ、事業継続に影響するケースも出ています。

原材料・エネルギー・物流のコスト上昇

食材価格に加えて、人件費や物流費の上昇も値上げの要因です。
仕入れ値が上がっても、客離れを恐れて十分に価格転嫁できない店では、その分だけ利益が減少するためです。
前述のとおり、業界全体の売上は客単価の上昇によって伸びているものの、値上げできた店と価格に転嫁しきれない店では、利益にも差が生じます。
さらに、コスト上昇の影響は店舗の規模によっても異なります。
チェーンはまとまった量を仕入れられるため、仕入れ単価を抑えやすいです。
一方、個人店では同じ条件での仕入れが難しく、原材料価格の上昇が利益を圧迫しやすくなります。

倒産件数の増加

東京商工リサーチの集計によると、2025年の飲食業の倒産は1,002件で、1996年以降の30年間で初めて年間1,000件を超えました。
内訳は、資本金1千万円未満の小・零細規模が886件と全体の88.4%を占めています。
要因別では物価高倒産が136件で前年比126.6%増、人手不足倒産が55件で同161.9%増と、どちらも2倍以上に増えました。
倒産の中心は小・零細規模の店であり、同じ時期にチェーンは店舗数を増やしています。
倒産件数は増えているものの、飲食業界全体の求人数が減っているとは限りません。

消費者行動の変化

テイクアウトやデリバリー、惣菜などの中食が生活に定着し、外食以外で調理済みの食事を選ぶ機会が増えました。
また、大人数での宴会需要が以前の水準まで戻っていないなど、外食の利用場面にも変化がみられます。
外食する頻度や一回あたりの支出、店を選ぶ基準など、消費者の行動も以前とは変わってきています。

価格競争から価値競争への移行

こうした変化を背景に、価格を重視する店と、専門性やサービスで差別化する店との違いが明確になっています。
規模を持つチェーンは、大量仕入れや業務効率化によってコストを抑えやすいです。
小規模店が大手チェーンと価格で競うのは簡単ではありません。
価格以外にも、料理やサービスなどで選ばれる理由をつくる必要があります。
そのため、自店の強みをどこに置くかを明確にすることが大切です。

今後注目される飲食店の特徴

市場の変化や現在の課題をもとに、今後注目される業態を解説します。

専門特化型

品数を絞り、その分野に特化することで、価格だけで比較されにくくなります。
また、品数を絞れば、仕込みの負担や在庫、廃棄、教育コストを抑えやすくなります。
人手不足やコスト上昇への対応策として、小規模店でも取り入れやすい方法のひとつです。

収益源を複数化する

店内飲食に加えて、テイクアウト、物販、通信販売、営業時間外の間貸しなど、売上の柱を複数持つ考え方です。
複数の収益源を持つことで、ひとつ売上が落ちた場合の影響を抑えやすくなります。
ただし柱を増やすほど手間も増えるため、いまの人員で回せるかを先に確認してください。

少人数で回す

券売機やモバイルオーダー、配膳機器、セルフレジなどを導入し、少ない人数でも営業できる体制を整える動きが広がっています。
以前は接客の質が下がると考えられることもありましたが、待ち時間の短縮や注文ミスの防止など、利用客にとってのメリットもあります。
ただし、機器を入れれば人が要らなくなるわけではありません。
導入と教育の手間、故障時の対応、常連客への説明まで考える必要があります。
一人で店を回す場合の限界については、別記事で詳しく扱っています。

インバウンドと地域需要

日本政府観光局の推計では、2025年の訪日外国人旅行者数は4,268万人で、前年比15.8%増となり初めて4,000万人を超えました。
観光庁の集計では、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円で、費目別の構成比では飲食費が21.9%を占めています。
ただし、インバウンド需要の影響は、立地や業態によって異なります。
訪日客を主なターゲットにするのか、地元客の日常利用を重視するのかによって、適した立地やメニューも変わります。

効率化だけを優先しない

省人化によって業務の負担やコストを減らせる一方、接客などを減らしすぎると、店ならではの良さが失われることもあります。
すべてを機械化するのではなく、接客や案内など人が対応したほうがよい業務を残すことも必要です。
どこまで省人化するかは、店の特徴や客層に合わせて検討しましょう。

働く側から見た飲食業界の今後

ここからは、働く側から見た労働環境や求められる経験の変化を解説します。

労働環境は改善に向かっているのか

人手不足が続くと、採用のために条件面を見直す企業が出てきます。
前述の帝国データバンクの調査では、飲食店の非正社員不足は3年連続で改善しています。
ただしこれは業界全体としての傾向であり、休日数や労働時間、給与の実態は企業と店舗によって差が大きいままです。
業界全体が改善したと受け取るのではなく、応募先ごとに確認する必要があります。

これから評価される経験

今後は、調理や接客だけでなく、原価管理やシフト作成、採用、新人教育、店舗のデジタル化への対応なども転職時のアピール材料になります。
現在の職場で、発注や原価管理、シフト作成などを任されている場合は、担当した業務を職務経歴として整理しておきましょう。
調理や接客以外の業務を経験する機会が少ない場合は、店長や社員に相談し、担当できる仕事を増やしていく方法もあります。

会社選びで確認したい点

会社選びでは、店舗数や展開している業態のほか、正社員の実際の労働時間や年間休日、教育制度、店長になるまでの期間、異動・転勤の範囲などを確認しましょう。
求人票だけではわからない点は、面接で確認しておくと安心です。
異動や転勤については、別記事でも詳しく解説しています。

飲食業界でのキャリアを考える

今の会社で経験を積むだけでなく、より条件の合う会社へ転職したり、店長やマネージャーなど次の役職を目指したりする方法もあります。
原価管理や人員配置、新人教育など、飲食店で身につけた経験は転職時にも活かせます。
今後の働き方を考える際は、業界全体の見通しだけでなく、現在の職場でどのような経験を積めるのかも確認してみましょう。

飲食業界の今後に関するよくある質問

飲食業界の今後について、よくある疑問を解説します。

飲食業界の市場規模はどれくらいですか?

外食産業の市場規模は、2023年に24兆1,512億円と推計されています。
一方、中食を含む広い範囲では、2024年度に32兆1,423億円、前年度比2.9%増と推計されています。
調査によって対象となる市場の範囲が異なるため、数字を比較する際には注意が必要です。

飲食業界はこれからも縮小していくのですか?

市場全体の売上は回復しており、日本フードサービス協会の調査では前年を上回る月が続いています。
一方で、東京商工リサーチの集計では2025年の飲食業の倒産が1,002件と初めて1,000件を超えました。
市場は拡大しながら、店舗の入れ替わりは激しくなっている状態です。
全体の縮小と個店の淘汰は別の動きとして分けて見てください。

これから伸びる業態はどれですか?

今後どの業態が伸びるかを断定することはできません。
ただし、専門分野に特化した店や、複数の収益源を持つ店、少人数でも運営できる店は、人手不足やコスト上昇に対応しやすいと考えられます。
一方で、価格や専門性で明確な特徴を出しにくい業態は、競争が厳しくなる可能性があります。

飲食業界は「やめとけ」と言われますが本当ですか?

飲食業界全体をひとくくりにして判断することはできません。
同じ飲食業界でも、企業規模や業態、店舗の運営体制によって、労働時間や給与などの条件は異なります。
転職先を選ぶ際は、年間休日や月の労働時間、賞与を含む年収、店長になるまでの期間などを応募先ごとに確認しましょう。

飲食業界の今後は企業や業態ごとに判断しよう

飲食業界では、市場全体の売上が回復する一方で、人手不足や原材料費の上昇、倒産件数の増加など、さまざまな課題が続いています。
働く側にとっても、業界全体の動向だけでなく、企業や業態ごとの労働条件や将来性を見ながら職場を選ぶことが大切です。
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山内芳輝

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