飲食店の利益を確保するには、売上を増やすだけでなく、食材費や人件費、固定費などのコストを適切に管理する必要があります。
売上が安定していても、原材料価格や人件費の上昇、食品ロスの発生などによって支出が増え、思うように利益が残らない場合もあります。
ただし、コストを削減するために食材の品質を下げたり必要な人員まで減らしたりすると、料理やサービスの質が低下して売上に悪影響を及ぼしかねません。
そのため、まずは費用の内訳や売上に対する割合を確認し、自店で負担が大きい費用や改善できる部分を把握したうえで、対策を検討しましょう。
この記事では、飲食店の食材費・人件費・固定費を削減する具体的な方法や、コスト削減を進める際の注意点を解説します。
飲食店のコスト削減は費用の内訳を把握するところから始める

飲食店のコストを削減するには、まず食材費や人件費、家賃などの支出がどの程度発生しているかを把握する必要があります。
コスト削減に取り組む前に把握しておきたい固定費と変動費の違いや、FL比率・原価率を使った費用の確認方法を解説します。
飲食店にかかるコストの内訳(変動費と固定費)
飲食店にかかるコストは、売上や販売量に応じて増減する変動費と、売上の増減にかかわらず一定額が発生する固定費に分けられます。
変動費には食材費や容器・包装資材費などがあり、固定費には家賃や正社員の基本給、リース料などが該当します。
ただし、アルバイトの人件費はシフトによって変動する部分があるものの、必ずしも売上に比例するわけではありません。
コストを削減する際は、変動費なら仕入価格や食材の使用量、固定費なら契約内容や設備の利用状況など、費用の性質に応じた見直しが必要です。
まずは直近の損益計算書や経費の記録から各費用の金額を確認し、売上に対してどの費用の負担が大きいかを把握しましょう。
FL比率・FLR比率の計算方法と確認するポイント
飲食店のコスト削減では、食材費や人件費などの金額だけでなく、売上に対してどの程度の割合を占めているかも確認する必要があります。
その際に役立つのが、FL比率(食材費と人件費)とFLR比率(食材費と人件費に家賃を加えた費用)です。
FL比率(%)=(食材費+人件費)÷売上高×100
FLR比率(%)=(食材費+人件費+家賃)÷売上高×100
たとえば、月商330万円、食材費90万円、人件費75万円の場合、FL比率は「(90万円+75万円)÷330万円×100=50%」です。
さらに家賃が30万円であれば、FLR比率は「(90万円+75万円+30万円)÷330万円×100=約59.1%」となります。
FL比率とFLR比率を確認すると、食材費や人件費、家賃が売上に対してどの程度の負担になっているかを把握できます。
ただし、適切な水準は業態や立地、店舗の規模などによって異なるため、数値だけで経営状態の良し悪しを判断するのは避けましょう。
過去の同じ期間と比較して比率が上昇している場合は、売上の変化に加え、食材費や人件費などの内訳を確認し、負担が増えている原因を調べる必要があります。
また、FL比率やFLR比率には光熱費などの経費が含まれないため、店舗全体の利益も確認しながらコスト削減を検討しましょう。
飲食店の原価率の計算方法と確認するポイント
原価率とは、売上高やメニューの販売価格に対して、食材原価が占める割合を示す指標です。
メニューごとの原価率に加え、店舗全体の食材費が売上に占める割合も確認すると、食材費の負担をより詳しく把握できます。
メニューごとの原価率は、以下の計算式で求められます。
原価率(%)=食材原価÷販売価格×100
たとえば、食材原価が300円、販売価格が1,000円のメニューであれば、原価率は30%です。
一方、店舗全体の原価率は、期首と期末の食材在庫を考慮して計算します。
店舗全体の原価率(%)=(期首在庫金額+当期仕入金額-期末在庫金額)÷売上高×100
ただし、適切な原価率は業態やメニュー構成、仕入価格などによって異なるため、一律に30%を目指す必要はありません。
また、メニューの収益性を確認する際は、原価率だけでなく、販売価格から食材原価を差し引いた粗利額も確認しましょう。
原価率が高いメニューでも、1品あたりの粗利額が大きく、販売数も多ければ、店舗全体の利益に貢献する場合があります。
原価率と粗利額、販売実績を比較し、仕入れやメニュー構成の見直しが必要か判断しましょう。
飲食店の食材費の削減方法4選

飲食店の食材費を削減するには、食品ロスを減らすだけでなく、仕入方法や食材の使用量、メニュー構成などを見直す方法があります。
料理の品質を維持しながら食材費を抑えるための4つの方法を紹介します。
食品ロス・廃棄ロスを減らす(在庫管理・先入れ先出し)
食品ロスには、仕込みすぎや食材の使い残し、顧客の食べ残しなど、さまざまな原因があります。
農林水産省の2024年度の推計によると、事業系食品ロス237万トンのうち、外食産業は70万トンを占めています。
また、東京都の「飲食店向け食品ロス削減テキスト」によると、2023年の飲食店における食品ロスの約7割は顧客の食べ残しによるものです。
食品ロスを減らすためには、まず廃棄した食材の種類や数量、金額を日々記録し、廃棄が多い食材や原因を確認しましょう。
仕込みすぎによる廃棄が多い場合は、POSの販売実績をもとに曜日や時間帯ごとの注文数を確認し、仕込み量を調整します。
また、食材の保存期限を確認しながら、先に入荷したものから使用する先入れ先出しを基本とし、期限が近い食材を優先して使用しましょう。
顧客の食べ残しが多い場合は、提供量を見直したり、小盛りメニューを用意したりするなどの工夫が必要です。
こうした対策を進める際は、改善前後の廃棄量や廃棄金額を比較し、食材費の削減につながっているか確認しましょう。
仕入れ先・仕入れ方法を見直す(相見積もり・まとめ発注)
食材の仕入価格や取引条件は業者によって異なるため、現在の仕入れ先が自店に合っているか、定期的に確認する必要があります。
まずは仕入伝票や請求書から、加工食品、野菜、魚、肉などの品目別に仕入金額を把握し、複数の業者から見積もりを取りましょう。
その際は、食材の単価だけでなく、送料や最低発注数量、納品頻度なども比較します。
また、発注頻度や1回あたりの発注量を見直すと、送料や仕入単価を抑えられる場合があります。
大量に使用する食材は、仕入れ先と一定期間の仕入価格や購入数量を決めて契約し、価格変動の影響を抑えるのも効果的です。
ただし、まとめ発注や契約によって必要以上に在庫が増えると、廃棄ロスや保管費用が発生する可能性があるため、食材の使用量や保存期間、契約条件を確認したうえで判断しましょう。
仕入れ先を変更する際は、価格だけでなく、食材の品質や納期、欠品時の対応なども確認してください。
必要に応じてサンプルを取り寄せ、実際の調理や提供に問題がないか確かめてから切り替えましょう。
レシピと提供量を統一して食材の使用量を管理する
盛り付け量が従業員によって異なると、想定より多くの食材を使用し、原価率が上がる場合があります。
たとえば、ソースや付け合わせを規定量より多く盛り付けると、想定以上の食材費がかかるほか、料理の見た目や味にもばらつきが出る場合があります。
こうしたばらつきを防ぐには、食材の分量や調理手順、盛り付け量を記載したレシピカードを作成し、従業員が同じ基準で調理できるようにしましょう。
計量スプーンやスケールなどを使用し、実際の使用量がレシピで定めた分量と一致しているか確認する方法もあります。
また、食材の使用量を管理する際は、仕入れた食材のうち、実際に料理に使用できる部分の割合を示す「歩留まり」も確認が必要です。
野菜の皮や肉の筋などを取り除いた後の重量を把握すると、必要な仕入量や1皿あたりの食材原価を計算しやすくなります。
レシピと歩留まりを適切に管理すれば、食材の無駄遣いを抑えながら、料理の味や提供量のばらつきも減らせます。
メニュー構成を見直す(ABC分析・メニューミックス)
メニュー構成を見直す際は、POSなどの販売データから、商品ごとの売上高や販売数、粗利額を確認しましょう。
売上高などを基準に商品をA・B・Cの3つに分類する「ABC分析」を使えば、売上への貢献度が高い商品や、販売状況を見直したい商品を把握できます。
売上高が大きい商品は販売機会を維持できるように在庫や提供体制を確認し、売上高が小さい商品は価格や提供方法の変更、販売継続の必要性を検討します。
ただし、売上高が小さくても、1品あたりの粗利額が大きい商品や、集客につながっている看板メニューなどもあるため、売上高だけで販売終了を判断しないようにしましょう。
また、商品ごとの販売構成を示す「メニューミックス」を確認すると、どの商品がどの程度売れているかを把握できます。
販売数が多く粗利額も確保できている商品は、メニュー表で目立つ位置に配置したり、セットメニューに取り入れたりして、販売を強化しましょう。
飲食店の人件費の削減方法4選

飲食店の人件費を見直す際は、必要な人員を確保しながら、シフトの調整や業務の効率化などによって無駄なコストを減らす方法があります。
接客や調理の品質、従業員の負担にも配慮しながら、人件費を適切に管理するための4つの方法を紹介します。
人件費率・人時売上高の計算方法と確認するポイント
飲食店の人件費を見直す際は、売上に対する人件費の割合を示す人件費率を確認します。
人件費には給与だけでなく、賞与や会社負担の社会保険料、交通費なども含めて計算するのが基本です。
人件費率(%)=人件費÷売上高×100
人件費率の適切な水準は、業態や営業時間、サービス内容、従業員の雇用形態などによって異なります。
そのため、過去の同じ期間と比較し、人件費の増減だけでなく、売上高の変化も確認しましょう。
また、従業員の労働時間に対して、どの程度の売上を確保できているかを確認する指標が人時売上高です。
人時売上高(円)=売上高÷従業員の総労働時間
たとえば、1日の売上高が30万円、従業員の総労働時間が60時間の場合、人時売上高は5,000円となります。
曜日や時間帯ごとの人時売上高を比較すると、売上に対する人員配置の状況を把握しやすくなります。
ただし、人時売上高が低いからといって、人員が余っているとは限りません。
仕込みや清掃など、売上に直接反映されない業務もあるため、実際の作業量や接客・調理に必要な人数を考慮して判断しましょう。
来客予測に基づいてシフトを見直す
来客数に応じてシフトを調整すると、接客や調理に必要な人員を確保しながら、人件費の無駄を減らせる場合があります。
まずは過去のPOSデータや予約状況から、曜日・時間帯別の売上高や客数を確認し、天候や近隣イベントの影響も考慮して来客数を予測しましょう。
忙しい時間帯は必要な人数を確保し、客数が少ない時間帯も仕込みや清掃などの業務量を踏まえて人員を配置します。
ただし、人件費の削減を優先して人数を減らしすぎると、従業員の負担が増え、接客や調理に支障が出るおそれがあるため、注意が必要です。
また、シフト作成に時間がかかっている店舗では、シフト管理アプリの導入も検討しましょう。
従業員の希望休や勤務可能時間を一括管理できるツールを活用すれば、シフト作成にかかる時間を短縮できる場合があります。
シフトを変更したあとは、人時売上高だけでなく、残業時間や従業員の業務量も確認し、無理のない人員配置になっているかを見直しましょう。
オペレーション改善と多能工化で業務を効率化する
飲食店では、調理器具や食器を取りに行く回数が多い、同じ作業を何度も繰り返しているなど、厨房やホールの業務に無駄が生じている場合があります。
こうした業務を改善する方法のひとつが、「排除(Eliminate)」「結合(Combine)」「入れ替え(Rearrange)」「簡素化(Simplify)」の4つの視点から作業を見直す「ECRS(イクルス)」です。
たとえば、使用頻度の高い調理器具を作業場所の近くに配置すれば、厨房内を移動する時間を減らせます。
また、複数の業務を担当できる従業員を育成する「多能工化」も、業務効率化につながる取り組みです。
ホールスタッフが簡単な盛り付けや洗い物を手伝えるようになると、忙しい時間帯に特定の従業員へ業務が集中する状況を改善できる場合があります。
ただし、担当業務を増やす際は、必要な教育をおこない、衛生管理や従業員の負担にも配慮する必要があります。
一度に多くの業務を変更すると現場が混乱するおそれがあるため、まずは一部の作業から見直し、従業員の意見や作業時間を確認しながら改善を進めましょう。
ITツール(POS・セルフオーダー)の活用と補助金
飲食店では、POSレジやセルフオーダーシステムなどのITツールを導入することで、従業員の業務負担を減らせる場合があります。
セルフオーダーシステムを導入すると、ホールスタッフが注文を受ける時間を減らせるほか、POSレジを活用すれば売上集計や販売データの管理も効率化できます。
ただし、ITツールの導入には初期費用や月額料金、保守費用などがかかるため、現在の作業時間と導入後に削減できると見込まれる時間を比較し、費用に見合うか判断しましょう。
導入費用の負担を抑える方法として、国の「デジタル化・AI導入補助金2026」を活用できる場合もあります。
補助対象となるITツールや申請条件は決められているため、利用を検討する際は公式サイトで最新の公募要領を確認してください。
飲食店の固定費や光熱費の削減方法3選

飲食店のコストを削減する際は、家賃やリース料などの固定費に加え、電気代やガス代、水道代などの光熱水費も見直す必要があります。
契約内容や設備の利用状況によって削減できる費用は異なるため、それぞれの確認方法と改善策を紹介します。
電気代・ガス代・水道代を見直す
飲食店では、厨房機器や空調設備などの使用によって、電気代やガス代、水道代が発生します。
これらの費用には、基本料金のように一定額が発生する部分と、使用量に応じて変動する部分があるため、契約内容と実際の使用状況を分けて確認しましょう。
まずは直近の請求書から、電気・ガス・水道の使用量と料金の推移を把握し、契約プランや基本料金が自店の利用状況に合っているか比較します。
電気代やガス代は、厨房機器や空調設備の使用時間、設定温度などを見直すことで、使用量を減らせる場合があります。
ただし、冷蔵庫や冷凍庫など、食品の安全管理に必要な機器は適切な温度を維持し、衛生管理に支障が出ない範囲で改善を進めましょう。
また、水道代は洗い物や清掃時の水の使い方を確認し、必要に応じて節水器具や食器洗浄機の導入を検討する方法もあります。
設備を新しく導入する場合は、購入費用や維持費と、削減できると見込まれる光熱水費を比較して判断しましょう。
家賃やリース料の契約内容を確認する
家賃やリース料は、売上の増減にかかわらず継続して発生するため、契約内容を見直すことで毎月の支出を抑えられる場合があります。
家賃を見直す際は、賃貸借契約書で契約期間や更新条件を確認し、近隣の類似物件の賃料や自店の売上高と比較しましょう。
家賃負担が大きい場合は、契約更新のタイミングなどに、貸主へ賃料の見直しを相談する方法もあります。
また、厨房機器などをリース契約している場合は、機器の利用頻度や月額料金を確認し、継続して使用する必要があるか検討します。
ただし、リース契約は中途解約が難しい場合もあるため、契約期間や解約条件、更新時期を確認したうえで判断しましょう。
その他の契約費用を見直す
飲食店では、家賃やリース料以外にも、廃棄物の処理費用や通信費、各種サービスの利用料など、継続的に発生する費用があります。
こうした費用は、毎月の請求書や契約書から金額とサービス内容を確認し、利用状況に合っているか見直しましょう。
たとえば、廃棄物の処理費用は、現在の回収頻度や廃棄物の量を確認し、必要に応じて回収条件の変更を検討できます。
業者を変更する場合は、適切な許可を持つ複数の業者から見積もりを取り、回収内容や料金を比較する必要があります。
また、通信サービスや有料システムなどは、実際に使用していない機能や不要な契約がないか確認し、契約プランの変更や解約を検討しましょう。
ただし、契約の変更によって店舗運営に支障が出る場合もあるため、費用だけでなく、業務に必要なサービスを維持できるか確認してください。
飲食店のコスト削減では品質低下や従業員の負担に注意する

コスト削減を優先しすぎると、料理やサービスの品質が低下し、顧客満足度や売上に影響する場合があります。
食材の仕入価格を抑えるために品質を下げると、料理の味が変わり、顧客が離れる原因になるかもしれません。
また、人件費を削減するために必要な人員まで減らすと、残った従業員の負担が増え、離職につながるおそれもあります。
従業員が離職すれば、新たな人材の募集や面接、教育などに費用や時間がかかるため、目先の支出だけで判断するのは避けましょう。
コスト削減を進める際は、料理の品質や衛生管理、接客に必要な費用を確保しながら、食品ロスや不要な契約、重複している作業などを優先して見直します。
改善後も顧客からの意見や従業員の残業時間、離職状況などを確認し、サービスの品質や働く環境に悪影響が出ていないか継続して確認しましょう。
飲食店のコスト削減は費用の内訳を確認しながら進めよう

飲食店のコスト削減では、食材費や人件費、固定費などの内訳を把握し、自店で負担が大きい費用を確認する必要があります。
食品ロスや仕入方法、シフト、契約内容などを見直し、改善できる部分から取り組みましょう。
コスト削減を優先しすぎず、料理やサービスの品質、従業員の負担にも配慮しながら改善を進めましょう。
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