コラム

飲食店のABC分析のやり方を解説!メニューの構成比・累積構成比の出し方・改廃判断

目次

メニューが増えすぎると、仕込みが追いつかず、在庫は増える一方で利益が残らないことがあります。そのような状態で感覚だけを頼りにメニューを削ると、売上を支えていた商品まで廃止してしまうおそれがあります。
こうした判断を感覚だけに頼らないために、活用できるのがABC分析です。
ABC分析は、手元の売上データを並べ替えて集計する方法で、特別なツールや統計の知識は必要ありません。
この記事では、自店のデータを使って表を作成し、メニューをA・B・Cに分類して、見直し候補を絞り込む手順を解説します。
数字だけでは判断できないメニューの見分け方や、Excelで使える数式も紹介します。

飲食店のABC分析とは何か?

ABC分析は、売上の大きい順にメニューを並べ、構成比をもとに分類する分析方法です。
ここでは、ABC分析の基本的な考え方を解説します。

ABC分析の基本的な考え方

ABC分析とは、商品を売上や粗利などの指標で大きい順に並べ、貢献度の高いほうからA・B・Cのグループに分ける手法です。
飲食店では、メニューごとに分類します。
ABC分析の背景には、売上の大部分が一部の商品に集中しやすいとする「パレートの法則」があります。
ただし、必ずパレートの法則にある8対2の比率になるわけではないため、自店のデータが当てはまらなくても問題ありません。
目的は法則を確かめることではなく、自分の店で実際にどの品が売上を支えているのかを、思い込みではなく数字で確認することです。

飲食店でABC分析が役立つ理由

飲食店では、メニューが1品増えるたびに仕込みや在庫管理の負担が増え、スタッフが覚えることも多くなります。
また、メニュー表では1品あたりの掲載スペースが狭くなります。
そのため、どれを残しどれを見直すかの判断が、そのまま日々の業務効率と利益に影響しやすいです。
とくに少人数で運営している店ほど、1品減らしたときの負担軽減がわかりやすいです。

いつ・どのくらいの期間のデータでおこなうか

直近の売れ行きを確認する場合は、月単位やキャンペーン期間など、分析の目的に合った期間で集計します。
期間が短すぎると、特定の日の売れ行きに結果が左右されやすくなります。
一方、季節変動をならして年間の傾向を判断する場合は、12ヶ月分のデータも確認しましょう。
繁忙期と閑散期では結果が変わるため、比較するときは集計期間や対象メニューなどの条件をそろえることが大切です。
忘年会シーズンや大型連休、キャンペーンを実施した月は、その内容をメモに残しておくと、あとから順位が変わった理由を確認しやすくなります。

飲食店のABC分析のやり方は?

飲食店でABC分析を実施する場合、手順を守ることが大切です。
具体例を使いながら、構成比と累積構成比の計算方法やA・B・Cへの分類手順、Excelでの操作方法を解説します。

ステップ1:メニューごとの売上高を集計する

用意するのは、メニュー名、単価、販売数(出数)、売上高の4列です。
売上高は単価×出数で求めます。
POSレジや会計システムによっては、商品別売上のレポートをCSV形式で書き出せます。
手書き伝票の店であれば、一定期間分の伝票から出数を数えます。
原則として、対象期間に販売したすべてのメニューの売上高を集計します。
メニュー数が多く、一度に集計するのが難しい場合は、フードとドリンクなどのカテゴリーに分け、分析対象の範囲を明記したうえで集計しましょう。

ステップ2:売上高の大きい順に並べ替える

売上高の列を基準に降順で並べ替えます。
Excelなら、表の範囲を選択して「データ」タブの「並べ替え」を開き、最優先されるキーに売上高の列を指定し、順序を「大きい順」にします。

ステップ3:構成比を計算する

構成比は、そのメニューが全体の売上のうち何%を占めるかを示す数字です。
構成比(%)=そのメニューの売上高÷全メニューの売上高合計×100
たとえば、対象期間の総売上が1,764,100円で、鶏の唐揚げの売上高が421,600円であれば、421,600÷1,764,100×100で約23.9%となります。
Excelでは、合計を出したセルを絶対参照で固定します。
合計がD14セルなら、E2セルに「=D2/$D$14」と入力して下へコピーし、E列の表示形式をパーセンテージの小数第1位に設定してください。
数式に「×100」を加えたうえでパーセンテージ表示にすると、23.9%ではなく2,389.9%と表示されるため注意が必要です。
また、ドルマークで合計セルを固定しないと、数式をコピーしたときに参照先がずれます。

ステップ4:累積構成比を計算し、A・B・Cに分ける

累積構成比は、上位からその行までの構成比を足した値です。
1行目は構成比そのまま、2行目以降は「前の行の累積構成比+自分の行の構成比」で求めます。
F3セルに=F2+E3と入力して下へコピーすれば計算できます。
しきい値には、累積構成比が70%以下をA、70%を超えて90%以下をB、90%を超えるものをCとする分け方があります。
また、75%以下をA、75%を超えて95%以下をB、95%を超えるものをCとする分け方も使われています。
どちらもABC分析で用いられる目安であり、すべての店舗に共通する絶対的な基準ではありません。
大切なのは、自店の規模やメニュー数、分析の目的に合わせて基準をひとつ決め、毎回同じ基準で比較することです。
基準が月ごとに変わると、ランクの変化が基準の変更によるものか、実際の売れ行きによるものか判断しにくくなります。

完成イメージ:サンプル表

架空の居酒屋のフードメニュー1ヶ月分を例に、実際に分けてみます。
以下はすべて説明用の架空データです。

メニュー名 単価 出数 売上高 構成比 累積構成比 ランク
鶏の唐揚げ 680円 620食 421,600円 23.9% 23.9% A
刺身盛り合わせ 1,280円 210食 268,800円 15.2% 39.1% A
出汁巻き玉子 580円 340食 197,200円 11.2% 50.3% A
フライドポテト 480円 380食 182,400円 10.3% 60.7% A
焼き鳥盛り合わせ 880円 190食 167,200円 9.5% 70.1% B
枝豆 380円 420食 159,600円 9.0% 79.2% B
シーザーサラダ 680円 150食 102,000円 5.8% 85.0% B
冷奴 380円 200食 76,000円 4.3% 89.3% B
牛すじ煮込み 680円 105食 71,400円 4.0% 93.3% C
だし茶漬け 580円 90食 52,200円 3.0% 96.3% C
アヒージョ 780円 55食 42,900円 2.4% 98.7% C
自家製プリン 380円 60食 22,800円 1.3% 100.0% C

売上高の合計は1,764,100円、累積構成比の最終行は100.0%になります。
表では構成比を小数第1位に丸めて表示しているため、表示された構成比を単純に足すと99.9%になります。
一方、累積構成比は丸める前の数値を使って計算しているため、最終行は100.0%になります。
これは表示上の端数処理による差であり、計算の誤りではありません。
また、上位4品の売上高は合計1,070,000円で、全体の約60.7%を占めています。12品のうち上位4品で売上の約6割を占めていることが、表にするとひと目でわかります。

ABC分析の結果を飲食店経営にどう活かす?

ここでは、ABC分析の結果をもとに、ランクごとのメニューの見直し方を解説します。

Aランク(主力メニュー)の見直し方

Aランクは、店の売上を支える主力メニューです。
欠品を防ぐために仕入れ先を確保し、担当者が変わっても品質を一定に保てるよう、分量や手順をレシピに明記しておきます。
まずは、安定して提供できる体制を整えることが大切です。
また、出数が多いため、価格や原価を見直した際の利益への影響も大きくなりやすいです。
1品あたりでは数十円の差でも、月単位では大きな差につながります。
メニュー上での見せ方を改善する場合も、Aランクから検討します。
名前を磨くなら、まずAランクとBランク上位からです。
メニュー名の付け方については、売れるメニュー名について解説した記事で扱っています。

Bランク(準主力)の見直し方

Bランクは、Aランクに次いで売上の割合が大きいメニューです。
掲載方法や組み合わせを工夫することで、注文数が伸びる可能性があります。
たとえば、掲載位置を変える、写真を追加する、Aランクのメニューとセットにするなどの方法です。
単品では選ばれにくいメニューでも、組み合わせによって注文されやすくなる場合があります。
まずはBランクの上位メニューから試してみましょう。

Cランク(下位)の見直し方

Cランクだからといって、すぐに廃止する必要はありません。
粗利率が高い、1品あたりの粗利額が大きい、看板メニューとして認知されている、特定の常連客から注文されている、ほかのメニューと食材を共用している、コースやセットに含まれているなど、残す理由がある場合もあります。
構成比が低いという理由だけで廃止すると、売上や顧客満足度、仕入れなどに影響する可能性があります。
Cランクのメニューは、売上だけでなく粗利や注文状況、ほかのメニューとの関係も確認したうえで、見直すかどうかを判断しましょう。

メニューを廃止するときの進め方

廃止すると決めた場合も、すぐに完全に外すのではなく、まずは期間限定で提供を止めて反応を確認します。
常連客から継続して注文されているメニューであれば、事前に案内しておくとよいです。
実際に廃止する際は、メニュー表の改訂に合わせて、仕込みや発注の内容を変更し、スタッフにも共有します。
削減できた仕込み時間や冷蔵庫のスペースをどのように活用するかも検討しましょう。
メニューを減らすだけでなく、その分の余力をほかの業務や主力メニューに活かすことが大切です。

飲食店のABC分析は売上だけでなく粗利や出数も確認しよう

ABC分析は、売上や粗利、出数など、どの指標を使うかによって結果が変わります。
ここでは、それぞれの指標で分析した場合の違いを解説します。

売上ベース・粗利ベース・出数ベースの違い

単価の高いメニューは、売上ベースだと上位に来やすくなります。
ただし原価率が高ければ、粗利額は売上高ほど大きくなりません。
一方、単価は低くても、出数が多く原価率の低い品は、粗利ベースでは順位が上がることがあります。
ここでいう粗利額は、売価から1食あたりの食材原価を差し引いた金額に出数を掛けて求めます。
粗利額=(売価−1食あたりの食材原価)×出数
この粗利額には、人件費や家賃、水道光熱費、販売手数料などは含まれません。
先ほどの表で、刺身盛り合わせの原価率を50%、出汁巻き玉子の原価率を20%と仮定します。
刺身盛り合わせの1食あたりの食材原価は1,280円×50%=640円で、粗利額は(1,280−640)×210=134,400円です。
出汁巻き玉子の1食あたりの食材原価は580円×20%=116円で、粗利額は(580−116)×340=157,760円です。
売上高では刺身盛り合わせのほうが上ですが、この2品を粗利額で比較すると、出汁巻き玉子が刺身盛り合わせを23,360円上回り、大小関係が逆になります。
ただし、全12品の粗利順位を出すためには、ほかの10品についても1食あたりの食材原価を確認する必要があります。
このように、同じメニューでも、売上高と粗利額では評価が変わることがあります。

3つの指標を組み合わせて見る

売上と粗利の両方でランクを確認すると、メニューごとの見直し方がわかりやすくなります。
売上・粗利ともにAランクのメニューは、主力として維持することが基本です。
売上A・粗利Cなら原価や価格を見直し、売上C・粗利Aなら注文数を増やせないか検討します。
売上・粗利・出数のすべてがCランクのメニューは、見直し候補として優先的に確認するとよいです。
出数も確認すると、売上金額だけではわからないメニューの特徴を把握できます。
出数が多いメニューは、多くの客に選ばれている定番商品である可能性があります。

ABC分析でわからないこと

ABC分析でわかるのは、現在のメニューのなかでどの商品が上位・下位にあるかということです。
分析結果だけで判断すると、メニュー本来の役割を見落とす可能性があります。
現在のメニューにない料理の需要や、客層・来店動機の変化まではABC分析では把握できません。
また、あるメニューを廃止した場合に、客が別のメニューを選ぶのか、来店自体をやめるのかまで予測することはできません。

Excelで飲食店向けのABC分析表を作る方法

ここでは、ExcelやGoogleスプレッドシートを使って、ABC分析表を作成する手順と数式の入力方法を解説します。

列の設計と入力

A列にメニュー名、B列に単価、C列に出数、D列に売上高、E列に構成比、F列に累積構成比、G列にランクを置きます。
粗利まで確認する場合は、H列に「1食あたりの食材原価」、I列に「粗利額」を追加します。
I2セルには「=(B2-H2)*C2」と入力し、下方向へコピーしてください。
ここで算出する粗利額には、人件費や家賃、水道光熱費などは含まれません。
データは2行目から入力し、1行目は見出しにします。
以下の数式例は、データが2行目から13行目、合計が14行目にある場合のものです。

使う数式

売上高はD2セルに「=B2*C2」と入力し、下方向へコピーします。
売上高の合計は、D14セルに「=SUM(D2:D13)」と入力します。
構成比はE2セルに「=D2/$D$14」と入力し、下方向へコピーします。
合計セルを絶対参照にすることが要点です。
E列はパーセンテージの小数第1位表示に設定します。
ROUND関数で数値自体を丸めるのではなく、表示形式だけを小数第1位にしてください。
累積構成比は、F2セルに「=E2」、F3セルに「=F2+E3」と入力し、F3セルを下方向へコピーします。
F列もパーセンテージの小数第1位表示に設定します。
70%・90%をしきい値にする場合、ランク判定はG2セルに次の数式を入力します。
=IF(F2<=70%,"A",IF(F2<=90%,"B","C"))
この数式では、累積構成比が70%以下ならA、70%を超えて90%以下ならB、90%を超える場合はCと判定されます。
75%・95%をしきい値にする場合は、次の数式を使用します。
=IF(F2<=75%,"A",IF(F2<=95%,"B","C"))
これらの数式は、Googleスプレッドシートでも使用できます。

毎月続けるためのコツ

フォーマットを固定し、毎月数字だけを差し替える形にしてください。
月ごとに結果を比較し、ランクが変わったメニューを確認します。
順位が動いた月は、天候、イベント、価格改定など、変動の要因として考えられることをメモに残しましょう。
数ヵ月分の結果を比較すると、季節による変化なのか、メニュー自体の売れ行きが変わったのかを判断しやすくなります。
分析を継続しやすくするためにも、確認する指標や頻度はあらかじめ決めておきましょう。

飲食店のABC分析に関するよくある質問

飲食店でABC分析をおこなう際によくある質問と、その回答を紹介します。

メニュー数が少ない店でもABC分析は意味がありますか?

メニュー数が少ない店でも、ABC分析を利用できます。
ただし、品数が少ない店では1品あたりの構成比が高くなるため、A・B・Cの3つに分けたときに、いずれかのランクに該当するメニューがない場合があります。
その場合は無理に3つのランクへ分けず、売上高の多い順に並べて、構成比や累積構成比を確認するだけでも、メニューを見直す際の参考になります。

ドリンクとフードは分けて分析すべきですか?

ドリンクとフードでは原価率や出数に違いがあるため、分けて分析するのがおすすめです。
ドリンクとフードでは、出数や原価率の傾向が異なるため、一緒に集計するとそれぞれの特徴を把握しにくくなります。
ドリンクとフードを別々に分析し、必要に応じて店全体の構成比も確認しましょう。

ランクの境目は70/90と75/95のどちらにすべきですか?

どちらも一般的に使われる目安であり、正解が決まっているものではありません。
70/90と75/95のどちらを使う場合も、同じ基準で継続して比較することが大切です。
迷う場合は、どちらかの基準で実際に分類し、Aランクに入るメニュー数を確認してみましょう。
比較を続けるためにも、基準を決めたあとは同じ条件で分析することが大切です。

テイクアウトやデリバリーの売上を混ぜてもいいですか?

原価構成と手数料が異なるため、分けて集計することをおすすめします。
デリバリーは手数料がかかるため、店内飲食と同じ基準で集計すると比較しにくくなります。
店内、テイクアウト、デリバリーをそれぞれ分けて分析し、必要に応じて店全体の構成比も確認しましょう。

POSレジがなく、手書き伝票しかありません。どうすればいいですか?

対象期間の伝票を集め、メニューごとに正の字で出数を数えて集計します。
1ヶ月分すべての集計が難しい場合は、曜日や繁閑の偏りが少なくなるように複数の日を選び、暫定的な傾向を確認する方法もあります。
ただし、数日分だけを集計した結果は、選んだ曜日や天候、イベントなどの影響を受けます。1ヶ月分の結果と同じものとして扱わず、あくまで簡易的な分析であることを明記してください。
正式にメニューの改廃を判断するときは、できるだけ対象期間全体の伝票を集計しましょう。
継続して分析する場合は、集計の負担を減らすためにPOSレジの導入も検討してください。

どのくらいの頻度で分析すればいいですか?

まずは月に1回程度を目安に分析すると、売れ行きの変化を確認しやすくなります。
メニュー改訂の前後や原価が大きく変わった時期には、必要に応じて分析の頻度を増やしましょう。

Cランクを削ったら売上が下がりました。なぜでしょうか?

その品を目当てに来ていた客がいた、セットやコースの構成要素だった、ほかの品と食材を共用していて仕入れロットが変わった、選択肢が減ってメニュー全体の見え方が変わったなど、考えられる理由はいくつかあります。
削る前に期間限定で外して反応を見ておくと、こうした影響を事前に把握できます。

飲食店はABC分析をメニューの見直しに活かそう

飲食店のABC分析は、メニューごとの売上や粗利、出数を整理し、見直すべきメニューを判断するための方法です。
分析結果だけで廃止を決めるのではなく、粗利や常連客からの支持、セット・コースでの役割なども含めて判断することが大切です。
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山内芳輝

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