QSCは、飲食店の状態を「Quality(料理・商品の品質)」「Service(サービス)」「Cleanliness(清潔さ)」の3つの視点から確認する考え方です。
料理や接客、店内の清潔さを個別に見るだけでなく、店舗全体の状態を幅広く確認できます。
QSCは点検表を作って終わりではなく、評価基準を具体化し、確認した事実を記録したうえで、改善する担当者や期限を決めることが大切です。
この記事では、QSCの意味や評価項目、時間帯別のチェックリスト、改善を継続する方法を解説します。
飲食店のQSCとは?

QSCでは、料理の味や量、案内や会計、客席や厨房の清潔さなどを共通の基準で確認します。
Quality・Service・Cleanlinessはそれぞれ独立しているわけではありません。
料理がおいしくても食器が汚れていたり、接客が丁寧でも料理の提供が大幅に遅れたりすると、店舗全体の評価に影響する場合があります。
QSCでは、複数の視点から店舗の状態を確認し、改善が必要な箇所を把握していきます。
なお、QSCは食品衛生上の安全を証明する制度ではありません。
必要な衛生管理は別途おこなう必要があります。
飲食店のQSCで確認する内容

QSCでは、Quality・Service・Cleanlinessのそれぞれで確認する内容が異なります。
各項目で確認したい主な内容と、評価する際のポイントを解説します。
Qualityで確認する内容
Qualityでは、料理の味や食感、温度、量、盛り付けなどを確認します。
おいしいなどの感覚だけで判断すると評価する人によって差が出やすいため、レシピや計量方法、完成写真など、共通して確認できる基準を用意することが大切です。
盛り付けは基準写真と比較し、量は店舗で定めた方法で確認すると、ばらつきを把握しやすいです。
また、同じ料理でも担当者や時間帯によって仕上がりに差が出ていないか確認します。
味や盛り付けにばらつきがある場合は、作り方や確認方法のどこに違いがあるのかを確かめ、必要に応じて手順や基準を見直します。
Serviceで確認する内容
Serviceでは、入店時の対応や席への案内、注文方法の説明、注文確認、料理の提供、会計、見送りなどを確認します。
声の大きさや決まった言い回しだけで判断するのではなく、顧客が迷わず利用できる対応になっているかを見ることが大切です。
席へすぐ案内できない場合は、待つ場所や待ち時間の目安を伝えているか、料理の提供が遅れている場合は状況を説明できているかなどを確認します。
苦情や要望を受けたときは、内容を聞いて事実を確認し、必要に応じて責任者へ引き継げるようにしておきます。
対応にばらつきがある場合は、スタッフ個人だけでなく、人員配置や情報共有の方法に問題がないかも確認しましょう。
Cleanlinessで確認する内容
Cleanlinessでは、入口や看板、床、客席、食器、トイレ、洗面、制服、厨房などの清潔さを確認します。
スタッフ側から見るだけでは、客席から目につく汚れや、手で触れる場所のべたつきなどを見落とす場合があります。
来店客の動きに沿って確認する場所を決め、テーブルであれば食べこぼしやべたつきがない状態など、清掃が完了したと判断する基準も明確にしておきましょう。
清掃表には、清掃する場所や方法、頻度、担当者などを記載します。
また、水こぼれやトイレの汚れなど、営業中にすぐ対応が必要な場合の手順も決めておきましょう。
飲食店のQSCと再来店・スタッフ教育の関係

QSCの基準に沿って店舗の状態を保つことは、顧客が安心して利用できる店舗づくりに役立ちます。
ただし、再来店や紹介、売上には価格や立地、集客などQSC以外の影響もあるため、QSCの評価結果だけで判断することはできません。
また、QSCで定めた基準は、店舗の状態を確認するだけでなく、スタッフ教育にも活用できます。
料理の完成状態や接客手順を明確にすると、教える人による違いを減らしやすくなります。
新人が覚える内容や、不明点がある場合の相談先も決めておくと、教育を進めやすいです。
点検結果はスタッフを責めるためではなく、設備や人員配置、手順、教育方法の見直しに活用することが大切です。
飲食店のQSCを時間帯別に確認するチェックポイント

QSCは、開店前・営業中・閉店後で確認する内容が異なります。
各時間帯で確認したい主な内容と、チェックする際のポイントを紹介します。
開店前
開店前は、料理を提供する準備が整っているか、顧客を迎えられる状態になっているかを確認します。
食材や機器の状態、仕込み量、味や盛り付けの基準、欠品、予約内容に加え、客席や入口、トイレ、メニュー、スタッフの身だしなみなども確認しましょう。
誰が確認するのか、問題が見つかった場合に誰が判断し、どのように対応するのかをあらかじめ決めておくことが大切です。
仕込みが不足している場合は提供できる数量やメニューを確認してホールと厨房で共有し、温度管理や設備に異常がある場合は店舗の管理手順に沿って対応します。
安全を確認できない食品は提供しないなど、状況に応じて責任者が判断できるようにしておきましょう。
また、未確認と確認済みを区別し、担当者が欠勤した場合に誰が代わりに確認するかも決めておきます。
営業中
営業中は、実際に提供している料理や接客、店内の清潔さを確認します。
料理の状態や提供時間、注文の取り違え、入口の待ち客、客席や床の汚れ、トイレ、欠品情報などを見て、開店前の確認後に変化がないかを確かめましょう。
確認する時間は、混雑しやすい時間帯やスタッフが交代する前後など、店舗の状況が変わりやすいタイミングに合わせます。
ただし、水こぼれや異物の申し出など、すぐに対応が必要なことは定時の確認を待たずに対処しましょう。
提供の遅れや注文ミスなどがあった場合は、発生した時間や商品、そのときの厨房やホールの状況を記録しておくと、あとから原因を確認しやすくなります。
問題が見つかった場合は点検した人だけで対応を終わらせず、必要に応じて責任者や次の担当者へ共有し、対応後の状態も確認しましょう。
閉店後
閉店後は、その日に起きた問題と、翌日に引き継ぐ内容を確認します。
廃棄や欠品、注文ミス、提供の遅れ、苦情、機器の異常などがあった場合は、件数だけでなく、いつ・どのような状況で起きたのかも振り返りましょう。
あわせて、清掃の完了状況や器具・食品の保管、閉店後も稼働させる機器、施錠などを店舗の手順に沿って確認します。
翌日の予約や仕込み、修理の予定、対応が終わっていないことがある場合は、誰へ引き継ぐのかと対応期限を決めて記録しておくことが大切です。
引き継いだ内容は記録を残すだけで終わらせず、翌日の担当者が確認できる方法を決めておくと、対応漏れを防ぎやすくなります。
飲食店のQSCチェックリスト一覧
以下は、開店前・営業中・閉店後に確認する内容の一例です。
| 時間帯・区分 | 確認項目・基準 | 結果 | 問題があった場合の対応 |
|---|---|---|---|
| 開店前・Q | 仕込み量とレシピの確認 | 未確認 | 不足している内容や手順を確認 |
| 開店前・S | 予約・欠品情報の共有 | 未確認 | 担当者へ共有し、内容を確認 |
| 開店前・C | 客席・食器の汚れや破損 | 未確認 | 清掃・交換後に再確認 |
| 営業中・Q | 完成写真と盛り付けの一致 | 未確認 | 提供前にレシピを再確認 |
| 営業中・S | 待ち時間の目安と遅延の案内 | 未確認 | 状況を確認して案内を更新 |
| 営業中・C | 床の水滴や通路の汚れ | 未確認 | 危険箇所を保護して清掃 |
| 閉店後・Q | 保管・廃棄の判断と記録 | 未確認 | 管理計画に従い責任者が対応 |
| 閉店後・S | 苦情・未完了業務の引き継ぎ | 未確認 | 対応担当と期限を決定 |
| 閉店後・C | 計画した清掃の完了 | 未確認 | 再清掃し、完了を記録 |
実際に使用する際は、自店の商品や設備、営業方法に合わせて項目を調整し、確認する担当者や問題があった場合の対応方法も決めておきましょう。
飲食店のQSCを改善する5つのステップ

QSCは、確認した結果をそのままにせず、原因を確認して改善につなげることが大切です。
店舗の状態を把握してから改善策を試し、再確認するための流れを5つのステップで解説します。
1.顧客が利用する流れを確認する
最初に、顧客が店を知ってから利用を終えるまでの流れを確認します。
検索や予約、来店、注文、飲食、会計、退店などの場面ごとに、分かりにくいことや利用しにくいことがないかを書き出しましょう。
スタッフの作業順だけを基準にすると、顧客が感じる待ち時間や、利用する際の分かりにくさを見落とす場合があります。
たとえば注文時には、価格や内容が分かりやすいか、注文方法を案内できているか、質問に対応できているかなどを確認します。
また、ランチと会食、店内飲食と持ち帰りなどでは必要な対応が異なるため、自店で多い利用方法に合わせて確認しましょう。
店内の様子や顧客から寄せられた意見をもとに、改善が必要な場面を確認していきます。
2.判断しやすい評価基準を決める
評価基準は、実際の行動や状態を見て判断できる内容にします。
「元気な接客」や「清潔な店」などの表現だけでは、人によって判断が変わる場合があります。
入店した顧客に気づいて案内できているか、テーブルに食べこぼしやべたつきがないかなど、具体的に確認できる内容へ置き換えましょう。
写真や重量、時間などを基準にする場合は、確認する方法やタイミングもそろえることが大切です。
一例を挙げると、提供時間を確認する場合は、注文を受けてから最初の料理を提供するまでなのか、すべての料理がそろうまでなのかを明確にします。
評価する人によって判断が分かれた場合は、同じ場面や記録を見ながら、基準のどこに違いがあるのかを確認しましょう。
3.点検結果と顧客の声を記録する
点検結果には、確認した日時や担当者、問題があった内容、そのときに対応したことを記録します。
評価結果だけでは、いつ何が起きたのかをあとから確認しにくいためです。
料理の提供が遅れた場合は、対象の商品や注文時刻、店内の混雑状況、人員配置など、原因を確認するために必要な情報を残しておきましょう。
顧客アンケートや苦情、クチコミも、店内の点検だけでは分からない状況を確認する手がかりになります。
ただし、ひとつの意見だけですべての顧客に共通する問題と判断せず、実際の記録とあわせて確認することが大切です。
記録を増やすこと自体を目的にせず、同じ問題が繰り返されていないか、改善が必要な箇所はどこかを確認するために活用しましょう。
4.原因を確認して対策する
問題が見つかった場合は、起きたことだけを見るのではなく、その理由を確認します。
料理の提供が遅れた場合も、厨房を急かすだけでは十分な対策にならないことがあります。
注文の集中や仕込み不足、食器の不足、人員配置、メニューの複雑さ、機器の不調など、どこに原因があるのかを記録と現場の状況から確認しましょう。
安全に関わる問題にはすぐに対応し、それ以外は影響が大きいものから対策を検討します。
対策を試す際は、変更する内容や担当者、開始時期、比較する数値などを決めておくことを意識してください。
複数の対策を同時に進めると効果を判断しにくくなるため、一度に試す対策を増やしすぎず、結果を確認しながら次の対応を決めましょう。
5.対策後の結果を確認して店舗のルールに反映する
対策を実施したら、変更前と同じ基準で結果を確認します。
曜日や時間帯、対象商品、客数などの条件が大きく異なる場合は、その違いも踏まえて比較することが大切です。
評価結果だけでなく、同じ問題が繰り返されていないか、顧客からの意見や作業時間、スタッフの負担に変化がないかも確認しましょう。
効果が確認できた方法は、基準写真や手順書、教育内容に反映し、ほかのスタッフも同じ方法で対応できるようにします。
十分な効果が確認できない場合は、記録した内容や原因の捉え方、実施した対策が適切だったかを見直します。
メニューや設備、人員配置などが変わった場合も必要に応じて評価基準を確認し、現在の店舗運営に合った内容へ更新していくことが大切です。
飲食店で使われるQSC+V・Hとは

QSCに、Value(価値)やHospitality(おもてなし)などの観点を加えて取り入れる場合があります。
一例を挙げると、日本マクドナルドでは「QSC&V」を掲げており、QSCにValue(価値)を加えています。
Valueは単に価格の安さだけを指すものではなく、料理やサービス、利用しやすさなどを含め、顧客が価格に見合う価値を感じられるかという考え方です。
追加する内容や評価方法は店舗によって異なるため、自店で何を確認するのかを明確にしたうえで取り入れることが大切です。
飲食店のQSCに関するよくある質問

飲食店のQSCに関する、よくある質問を解説します。
QSCは誰が評価しますか?
QSCは、店長や各担当者、時間帯ごとの責任者などが評価します。
誰がどの項目を、いつ確認するのかを決めておくと、確認漏れや担当の曖昧さを防ぎやすくなります。
複数の人が評価する場合は、同じ写真や場面を使って判断基準をそろえるのが大切です。
評価が分かれたときは、点数だけを比べるのではなく、どの基準をどのように判断したのかを確認しましょう。
QSCは人事評価へ使えますか?
QSCの結果を人事評価に取り入れる場合は、店舗全体の状態と個人の行動を分けて考える必要があります。
提供の遅れや清掃不足には、人員配置や設備、教育方法などが影響している場合もあるため、店舗全体の評価結果をそのまま個人の評価へ結び付けないことが大切です。
人事評価へ取り入れる際は、担当する役割や実際の行動も確認し、既存の評価制度や就業規則とあわせて判断しましょう。
飲食店のQSCは基準を決めて継続的に見直すことが大切

QSCは、料理の品質、サービス、清潔さを共通の基準で確認し、改善が必要な箇所を把握するために活用できます。
確認する内容や判断基準は店舗によって異なるため、自店の商品や設備、営業方法に合わせて設定することが大切です。
点検した結果は記録して終わりにせず、問題があった場合は原因を確認し、対策後の変化も見ながら必要に応じて基準や手順を見直しましょう。
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