飲食店のビジネスモデルは、料理を作って店内で提供する形だけではありません。
テイクアウト、デリバリー、予約制コース、物販、ケータリングなど、顧客へ価値を届けて収益を得る方法は複数あります。
ただし、販売方法を増やせば利益が増えるとは限りません。
手数料や包装資材費、追加の人員、設備、ブランド管理にかかる負担によって、利益や現場の業務量は変わります。
この記事では、飲食店の代表的なビジネスモデルと、顧客や商品、費用、運営体制などを踏まえて自店に合う形を選ぶ方法を解説します。
飲食店のビジネスモデルを考えるときの主な要素

ビジネスモデルは、誰にどのような価値を届け、どのように収益を得て費用をまかなうかという仕組みです。
自店に合う形を考えるときは、顧客や注文経路、提供価値、商品・サービス、収益、主な費用、必要な資源などを確認します。
たとえば、近隣の会社員へ短時間で昼食を提供する店と、記念日向けに予約コースを提供する店では、価格や仕込み、席、接客、集客方法が異なります。
顧客の利用目的や販売方法によって、必要な設備や人員、発生する費用も変わるため、売上だけでなく、運営に必要な業務や費用も含めて考えることが大切です。
飲食店の代表的なビジネスモデル8種類

飲食店のビジネスモデルには、店内飲食だけでなく、テイクアウトやデリバリー、物販などさまざまな形があります。
それぞれの特徴や、必要な設備・人員・費用などの違いを解説します。
1.店内飲食型
店内飲食型は、店舗で料理や飲み物を提供し、空間や接客も含めたサービスの対価として売上を得る形態です。
食事を楽しむ時間や居心地を価値にできる一方で、席数や営業時間、厨房の処理能力によって、一度に対応できる客数には限りがあります。
そのため、想定する顧客の利用目的に合わせて、料理や価格、滞在時間、接客などの内容を組み立てることが大切です。
店舗の広さや設備、人員体制によって提供できるサービスの範囲も変わるため、自店の運営条件に合う形で設計する必要があります。
2.テイクアウト型
テイクアウト型は、店舗で調理した料理や商品を持ち帰り用として販売する形です。
客席が満席でも注文を受けられる場合がありますが、厨房の調理能力や受取場所には限りがあるため、店内客と受取客の動線や注文の受付方法を考える必要があります。
また、商品は調理してすぐの状態だけでなく、持ち運びや時間の経過による味や見た目の変化も確認し、商品に合った容器や包装方法を選びます。
テイクアウトでは温度管理や提供後の食中毒予防にも注意が必要です。
商品や販売方法によって必要な許可や表示が異なる場合があるため、開始前に保健所などへ確認しましょう。
3.デリバリー型
デリバリー型は、自店で配送する方法や外部のデリバリーサービスを利用して、顧客の指定先へ料理を届ける形です。
来店が難しい顧客にも商品を届けられる一方で、配送範囲や注文の受付方法、注文が集中したときの対応を決めておく必要があります。
また、調理から配達までに時間がかかるため、配送中の温度管理や、到着時の味・見た目なども確認します。
外部サービスを利用する場合は、手数料や入金方法、キャンセル時の扱いなどの契約条件がサービスごとに異なるため、導入前に確認することが大切です。
店内営業と並行する場合は、注文が集中する時間帯の受付数や対象商品を調整し、既存の営業に無理が出ない運用を検討しましょう。
4.予約・コース型
予約・コース型は、来店人数や提供する料理などを事前に決め、予約内容に合わせて食材や人員を準備する形態です。
記念日や会食など、利用目的に合わせて料理やサービスを組み立てやすく、必要な食材やスタッフ数を事前に把握しやすい特徴があります。
一方で、人数変更やキャンセルが発生する場合もあるため、料金に含まれる内容や人数の確定期限、変更方法、キャンセル条件などをあらかじめ決めておく必要があります。
予約枠や仕入れの締切、スタッフ配置を連動させ、予約内容に応じて無理なく対応できる運営方法を検討しましょう。
5.物販・EC型
物販・EC型は、調味料や冷凍食品、菓子、ギフトなどの商品を、店頭やEC(インターネット通販)で販売する形態です。
ECを活用すると来店できない顧客からも注文を受けられますが、製造や保存、在庫管理、梱包、配送、問い合わせ対応など、店内営業とは異なる業務が増えます。
また、店内で提供している料理がそのまま通販に適しているとは限らないため、保存方法や配送後の品質を踏まえた商品づくりが必要です。
冷蔵・冷凍設備や賞味期限、食品表示、営業許可など、商品や製造・販売方法によって必要な対応は異なります。
販売を始める前に、必要な許可や表示について保健所などへ確認し、無理なく製造・保管・発送できる体制を整えましょう。
6.ケータリング・出張型
ケータリング・出張型は、会議や催事などの会場へ料理やサービスを提供する形態です。
料理を届けるだけの場合と、現地で調理・配膳・撤収もおこなう場合では、必要な人員や設備、準備内容が異なります。
見積りの段階で、提供する内容や人数、時間、会場の設備、搬入経路などを確認しておくことが大切です。
また、人数変更や延期、悪天候、キャンセルなどが発生する場合もあるため、対応できる範囲や条件をあらかじめ決めておく必要があります。
会場での調理や提供には、施設や開催方法に応じて許可などの確認が必要になる場合があります。
既存店舗の営業と並行する場合は、必要な人員や準備時間を確保できるかも検討しましょう。
7.会員・サブスクリプション型
会員・サブスクリプション型は、会費や定期的な料金を受け取り、継続して商品やサービスを提供する形態です。
一定の収入を見込みやすい一方で、利用回数が増えると食材費やスタッフの作業負担も増えるため、料金と提供内容のバランスを考える必要があります。
料金や利用できる内容、有効期間、更新・解約条件などをあらかじめ明確にしておくことも大切です。
また、予約が特定の時間帯に集中すると、通常営業に影響する場合があります。
導入する際は、少数の会員から試し、利用状況を確認しながら店舗で無理なく提供できる範囲を検討しましょう。
8.複数ブランド・間借りなど既存設備を活用する型
既存の厨房や空いている時間を活用する方法には、複数ブランドの展開や間借り営業などがあります。
複数ブランドは、同じ事業者がひとつの厨房を使いながら、異なる店名や商品構成で販売する形です。
一方、間借りは、ほかの店舗の場所や設備を借りて営業する方法で、営業者や契約関係は複数ブランドとは異なります。
既存設備を活用できるため、新たに店舗を構える場合と比べて設備投資を抑えられる場合がありますが、厨房の能力や在庫の保管場所、清掃、注文管理などへの対応が必要です。
間借り営業では、貸主との契約や営業許可など、営業方法に応じた確認も必要になります。
複数ブランドを展開する場合も、注文や在庫の管理が複雑になりすぎないよう、既存店舗の運営と両立できる体制を検討しましょう。
飲食店が新しいビジネスモデルを小規模に試す方法

新しいビジネスモデルを取り入れるときは、最初から本格導入するのではなく、対象となる顧客や商品、提供方法を絞って試す方法があります。
予約受付や試験販売などを通して、実際に注文が入るか、無理なく提供できるかを確認することが大切です。
試す範囲や期間を決めたうえで、注文数や作業時間、商品の品質、顧客の反応、既存営業への影響などを記録します。
あわせて、注文数や採算、作業時間、支出額など、継続するかを判断する基準もあらかじめ決めておきましょう。
結果が基準に届かなかった場合は、需要や価格、商品、運営方法のどこに問題があるかを確認し、条件を変更して再度試すか、終了するかを判断します。
終了する場合は、すでに受けている予約や注文、前払い、取引先との契約などへの対応も必要です。
なお、試験的な販売であっても、必要な許可や表示、契約、安全管理については開始前に確認しておきましょう。
飲食店で複数の販売方法を組み合わせるときの注意点

店内飲食、テイクアウト、デリバリーなどを組み合わせると、複数の注文が同じ時間帯に集中する場合があります。
厨房で対応できる注文数や受付時間を決め、状況に応じて受付を止められる運用にしておくことが大切です。
同じ食材や商品を複数の販売方法で扱う場合は、在庫状況を共有し、欠品した商品の受付が続かないように対応します。
また、店舗やデリバリーサービスなどで営業時間、価格、商品内容、予約条件が異なる場合は、それぞれの情報を正しく掲載し、変更時には更新が必要です。
複数の販売方法を取り入れる際は、新しい販売方法の売上だけを見るのではなく、既存営業への影響や追加する業務も含め、店舗全体で無理なく運営できているかを確認しましょう。
利益率だけで飲食店のビジネスモデルを選べない理由

利益が出やすいとされる業態や販売方法でも、すべての店舗で同じ結果になるわけではありません。
同じビジネスモデルでも、家賃や客単価、食材費、人件費、周辺の競合状況などによって、収益性は変わります。
そのため、業態や販売方法のイメージだけで判断せず、自店で必要な客数や注文数を確保できるか、商品ごとに利益が残るか、忙しい時間帯にも安定して提供できるかを確認することが大切です。
自店の顧客や立地、商品、運営体制などを踏まえ、実際の数値をもとに比較しましょう。
飲食店のビジネスモデルを数字で比較する方法

ビジネスモデルを比較するときは、売上だけでなく、必要な費用や人員、設備投資なども含めて確認することが大切です。
まず、同じ期間と条件で、客数や注文数、単価、売上、食材費、容器代、手数料、人件費、廃棄などを比較します。
販売方法によってかかる費用が異なるため、売上が高くても、手数料や追加の人件費によって利益が残りにくい場合があります。
利益を比較するときは、どの費用を差し引いた金額なのかをそろえて確認しましょう。
また、毎月一定額が発生する費用と、注文数に応じて増える費用を分けて考える必要があります。
設備投資や借入返済、仕入代金の支払い、売上代金の入金時期は、利益とは別に資金繰りへ影響します。
新しい販売方法だけを見るのではなく、既存営業への影響も含めて、店舗全体で無理なく続けられるかを判断しましょう。
飲食店のビジネスモデルを見直すタイミング

売上の内訳が変わった、利用しているサービスの手数料が上がった、注文の集中によって厨房の負担が増えたなど、運営状況に変化があったときはビジネスモデルを見直すタイミングのひとつです。
顧客から新しい利用方法への要望が増えた場合も、現在の販売方法がニーズに合っているかを確認するきっかけになります。
また、契約の更新や設備投資など、店舗の費用や運営方法が大きく変わる前にも、各販売方法の売上や費用、業務負担を確認し、継続するかを判断することが大切です。
飲食店のビジネスモデルは自店の運営条件に合わせて選ぼう

飲食店のビジネスモデルには、店内飲食やテイクアウト、デリバリー、物販・EC、ケータリングなど、さまざまな形があります。
必要な設備や人員、費用、運営方法はそれぞれ異なるため、売上の見込みだけでなく、自店の商品や顧客、厨房の能力、スタッフ体制などを踏まえて選ぶことが大切です。
新しいビジネスモデルを取り入れる場合は、小規模に試しながら注文数や作業負担、既存営業への影響を確認し、継続するかを判断しましょう。
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